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JuventusとCapitanoを愛しています。銀座の映画会社で働く40歳のチンドン屋です。 サッポロ黒ラベルとウイスキーで幸せ。クラシックギター歴10年エレキは25年。L.Aメタル華やかりしき頃、4年L.Aに住んでました。

2012年12月4日火曜日

引き攣った笑顔で人妻をナンパするボンドは二度死ぬ



サム・メンデス、なかなかええ監督やね、彼が、007、いうことで
色々、チラチラ、気にしながら初日を向かえました。
楽しみ、楽しみ、どんなんなってるかなあ言うて、あなた、観に行ったら、
なんや、コネリーのボンドへ戻ろうとしていたんですね。

クレイグボンドになってから3本、ゆっくり、ゆっくり舵を切りながらここを目指していたんかいうね。
ハイ、
プロデューサーのバーバラちゃん、
頑張りましたね、
お父さんのブロッコリも、天国だか地獄だかで喜んでいるでしょうね!

はい!ココからは、完璧に、ネタバレですよ。
そして今回やたら長文ですよ、
嫌にならないでくださいね、
こわいですねこわいですね。


そもそも007とは年末お正月辺りに「よっ!待ってました」いうカンジで楽しむ
寅さんライクなカテゴリの娯楽作品としてつき合ってきたので
見るにあたり、そんなにハードル高くないです。

高くないというわけで、
バルデムの秘密基地にボンドのテーマに乗ってヘリがやってくるところまでは
「イイよイイよーこれはイイよー」とご満悦。
その後、
過去への目配せなのか甘えなのか判然としない小ネタと
トーマス・ニューマンの素晴らしいスコアに助けられながら
バルデムが捕まった後のグダグダ感を乗り切り
エンドロールを楽しんで映画館を後にした頃には
「ベンベケベンベーンベンベンベン♪」とゴキゲン。

だった。

だったが。

が、しかし。

引き攣った微笑みで人妻をナンパする

不器用なボンドはいなくなったね。


今回クレイグはボンドではなくコネリーの亡霊を演じている(演じさせられている)。
これがそもそも軽薄さとエロガンスを顔に張り付かせているブロスナンのようにはいかない、
いかないのが哀しい。
いかないのが哀しいとか言うと遅漏みたいですね。

顔そのものではバルデムより全然上を行くクレイグだが、今回はダメだったころのデニーロばりにやり過ぎているバルデム如きに、文字通りレイプされている。
けんさしまちゅよーばぶばぶ
不器用ボンドならばコソコソ後ろからナイフを刺すようなセコいことはせずに
ジョン・ウェインよろしく正面からストロングスタイルで叩きのめしているよね。

もちろん、コネリーボンドはセコくてチートでちゃっかりなところがチャームポイントなので
コネリーボンドへの回帰を図っている演出としては筋が通っている。

コネリーのようなエロガンスが無いというだけである。

チートでちゃっかりエロガンスなコネリー
でもさ、スペクター顔やん!!みたいなブーイングを跳ね返したのは
不器用なボンドなんだよね。

僕はカジノロワイヤル大好きなのね。

あれのクレイグは「顔を作る」ことなくスッとそこにいて
その様がホントヨカったの。

あのボンドもう見られないの残念だね。

『モンスター上司』のチューチューしてばっかりのジェレミー・フォックスとか
そういうカンジなんよね。

もちろんトム様なんかは絶対ああいう「顔を作って演じる」ようなことはしないね。
常に、トム・クルーズだね。そういうことやね。

顔、顔の話もう少しすると、

レイフ・ファインズみたいなM顔が登場した瞬間に
Mの交代劇があることは明らかなのに最期まで引っ張ったよね。
なんでアタシが降りるのよ!!
Mが危ない!
会議場へ駆けつけるボンド!間に合うの!間に合わないの!というくだりで
バルデムはMを殺すべきだった。
(そのシーンの成果はレイフ・ファインズがMに値する男だという演出だけ)
あそここそが映画におけるMの殺しどころだったのに
サム・メンデスはMを殺しそこなった。
その時点で勝負ありというか
「Mの花道全部見せます物語の奴隷」というカンジで失速したね。
走るボンドにMの夫が好きだったという詩が乗るくだりは
恐らくこの映画のエモの全てが現れるところだったと思うのだが
Mが助かってしまったために、消化不良に終わった。
勿体無いおばけが出ます。

ここからはもう
死ぬフラグが立ったMをボンドは最後まで守ろうと頑張りますよ。
(僕は孤独にバルデムを追い詰める
不器用なボンド見たかったな)
ついでにボンドの生い立ちも見せますよ
ハビエルはこのあと怖くもなんともなくなりますがまあ気にせんといてください
という状態でシナリオ通りに予定通りにヌルヌルと進行していきます。


それでは「イイ!!」と興奮してたバルデム確保までのクダリを思い出してみます。


おなじみのライオンちゃんのドアップからはじまります。

暗い廊下をボンドらしきシルエットが歩いてきます、ボケボケなので死にかけとる誰かの視点か覗き穴からの視点と思ったらそういうことではありませんでした、なんとなくフォーカスがあいます、やはりボンドです、登場の演出は特に工夫が無い模様です、ヒーローの顔をどのタイミングでどう見せるかは腕の見せ所なのですが。

ボンドはインカムでぺちゃくちゃ喋ってます、部屋に入ると男が椅子でグッタリしとります、どうやら仲間のスパイですな、助けるの助けないの喋ってます、壊れたパソコンかなんかを弄って放ります、奪われたらアカンというヤツを奪われた模様です、敵側に潜入中のスパイリストみたいですまるでMIのノックリストです。

仲間を見捨てて誰かを追跡します、外へ出ると明るい光に包まれてそこにはトルコの町並みが広がっていますイスタンブールでしょうか、暗がりで始めて太陽の下へ急に出すことでエキゾチックな雰囲気に突如放り込まれたキブンをちょっと割り増しするエコノミーな演出です。

丁度サーッと現れた車に乗ります、オネエチャンが運転してます相方のようです、ボンドは軽口を叩いてニヤリとしたりしています先ほどの仲間に対する情けもそうですがどうやらハードボイルド路線を少し緩めてショーンのボンドっぽく行くよという雰囲気があります。

奪った男は車でフワーしてます。一頻りカーチェイスです、サイドミラーが両方とも壊れるという演出がありますがそれはジョークのために壊されたようです、小競り合いを経てボンドがハンドルをグイーやったら追いかけてる男が乗った車が吹っ飛びます。

どっち側かよくわからんバイクがワラワラ沸いてきて何の役にも立たずにコケまくるのでこれはバイクチェイスに移行するんだなと思っていたら案の定です。

男はそのバイクを奪って逃げ出します、何故かボンドはその辺にあったバイクを盗みますがどちらもオフロードバイクです。オフロードなだけあって屋根やら階段やら段差もなんのそのでバイクチェイスです、高い場所の細い真っ直ぐなトコロをバーッと走っていくところはもっとドキドキさせられる撮り方があるのでは。上を走る下を走る入れ替わる高低さで魅せるということもなく二台が一直線にファー走ってます。

そして舞台は列車の上へ、相方のオネエチャンがMに状況を説明しろ言われますが「説明しにくいです」と言います、確かに説明しにくいです、列車に積まれたショベルカーに乗り込んだボンドが列車の上にいる男に迫ります、男は何故かドラムマガジンをつけた拳銃(?)で撃ちまくってます変わった銃の趣味ですね。ボンドは右胸の辺りを撃たれてしまいます。

逃げる時に列車の連結を外すというネタは数多くの映画で使われてますがショベルカーの油圧ショベルで遠ざかる車両の屋根を捕まえて乗り移るという演出ははじめて見ました、乗り移ったボンドはちゃんと身嗜みを整えますこの辺「お」というカンジです。ワールドイズノットイナフでも猛チェイス中のブロスナンが水中でタイを直している演出がありましたがこういうのは好きなんです、好きなんですがという雰囲気が強くなります。さて屋根の上で小競り合いが続きます、

オネエチャンは追いかけ続けますが橋に差し掛かるところでもう追いかけられないとなります、撃て撃て言うMに煽られながらオネエチャンはスコープを覗きます、この銃もPSGのようなスナイパーライフルではないようで銃の選択が面白いです、2人が揉み合っていてなかなか撃てません、Mはええから撃て言います、撃ちました、ボンドが落ちました。

あーあ、ということでお馴染みのタイトルデザインへ、沈んでいくボンドを生かした演出でどんどん落ちていく沈んでいくイメージに主題歌が乗ります。今回の主題歌はレイドバックしてて良いですね、クレイグの笑顔や軽口が示す往年感はここにも出ています。チナミにここで出てくるボンドアイコンも右肩の辺りを撃ち抜かれていますなにかあるのでしょうか。
おれの肉体美…見てるかい
このあとでMI6が爆破されるシーンがあるのですがここがイマイチです、キーキー言ってるMを尻目にサプライズでビルが爆発しますがそこがMI6であることが一発でわかりません。台詞でしか説明してないからです。一回でもMがそこにいるのかそこから出てくるのか見せてからやればイイのに下手だなあ。イヤな予感再びです。レイフ・ファインズです新しいMになるんだろうなという顔をしている役者の登場です。こういう明確な役者のチョイスは良いです。もう引退しろみたいな雰囲気になってますがMは逆ギレでイヤイヤしてます組織の上から言われてるのにそんな強気に出れるのが不思議です。

そういえば関係ないけど
今回のボンドはよく落っこちてますね。
橋で、タイトルデザインで、マカオのカジノで、凍てついた湖で。
冒頭の追いかけっこの相手も最期は落っこちてました。
ヴェスパー…また水の中だよ…
これが新しいMI6やでえというクダリがあります。
丁稚が「チャーチルが作った」とか言ってますがそんなことは台詞で足すなよと思います。
葉巻を進めるファインズとか見せ方は色々あるだろうと瞬間的に思ってしまいます。
なんかこういうサボり方が散見されます。

新オバケのQ太郎登場します。ボサボサメガネで銃を渡します。
わざわざ美術館で待ち合わせて並んで座ってやりとりする演出の意味は
なにかと思って見ていましたがよくわかりませんでした。
よくわからない2ショット
マカオではロッぽいオネエチャンといちゃつきます。

「怖がっている女はわかる」みたいなことを言います。
「(ヴェスパーの方がイイオンナだなあ)」
これは良い台詞。ヴェスパーを思い出してしまいます。
でも特になんということもなくシャワーを浴びているオネエチャンを
ガラス越しにファックします、台無しです。
このテキトーな抱き方はまさにコネリーボンドです。
チートでエロガンスなry
でもボンド来ないわーと待ってるオネエチャンを
冷やしたシャンパンと2つのグラスと人待ち顔だけで見せた辺りは良いです。


バルデムの秘密基地へ向かう船のデッキにみんな並んで立ってる画が
妙にヨカった。なんでみんな並んで立ってるのかわからんけど、
あれはちゃんと並べてるわけです。
何人か男たちがいたらちゃんと並べるべきです。

そういや
全然関係ないけど
マカオのカジノにカジノロワイヤルで
テーブルに着いてた日系っぽい長髪の兄ちゃんいたよな。

そして二匹のネズミがどうしたこうしたオカマちゃん風にふざけまくるバルデムショーを

一頻り見た後はこれまた無意味にオネエチャンが殺されて往年感です。
綺麗なオネエチャンが
無意味に死にまくって上等なのがボンドです。

おなじみの音楽に乗ってヘリがやってきてお楽しみはこれからだと思ったら
思ったら、、、

なんすかね
クリスタルスカルでも思ったんですが
なんでご一行になっちゃうんですかね。
ヒーローは孤立無援であってこそなんじゃないのですかね。

インディに元カノやら息子やらわらわら連れが要らないように
ボンドにも昔世話になったオッサンやら上司やらインカムやらは要らないんですよ。

あと新オバケのQ太郎は頭とケツだけで良いです。
あいつは一体何しに出てきたんだ。
何しに出てきたんだっけ、俺。
とかなんとか言ってますけど
いつもの007としてみれば楽しかったし
ボロボロだった慰めのナントカより全然ヨカったですし
なにより007の初日を満員の日劇で祝えたのが
ホント嬉しかったです。
大ヒットおめでとうございます。
擁護するまでもない
超大ヒットなので安心して文句言えます。

というわけでスカイフォールはなかなかの007でしたよ。
それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
隣に乗ったら吹っ飛ばす!!!!!!